2009年途中経過

2009年、オニカサゴ(ヤリイカ)竿とカワハギ竿の2本を製作しました。
膨大な製作工程のほんの一部ではありますが、途中経過を写真とともにご紹介します。



7月19日、素材選びから始まって、切り組み、火入れ、素地調整、継ぎ、糸巻きなど漆作業に入る前段階の工程がほぼ終了しました。
2本ともグラス穂先で、胴は丸節竹、手元は孟宗竹、印籠2本継ぎ仕立てです。




8月4日、なかなか進みませんが、ようやく呂色塗りの下塗りまで終わりました。
糸極めの後、生漆1回、呂色漆を3回塗って、中矯めした状態です。(最初の2枚の写真は、呂色を塗り終わって、室で乾かすところです。)
印籠の芯は生正味(きじょうみ)漆で摺り漆を2回行った後、すでに接着済みです。




8月28日、相変わらず進みが遅いですが、胴塗りが一応終了して、糸巻き部分の呂色塗りを再度研いだところです。
この後、糸巻き部を仕上げていきますが、継ぎ部の口塗りをどんな変わり塗りにしようか、それともシンプルな蝋色磨きで仕上げようか考え中です。
目が鋭い方はお気付きかと思いますが、不注意によって細い方の竿(カワハギ竿)の手元の挿げ口を潰してしまったため、別の竹で一から作り直しています。おかげで、手戻り作業が一週間ほど掛かってしまい、遅れの原因になっています。まだまだ先は長いです。




9月12日、今年は残暑も無く、すっかり秋めいてきましたが、そんな中も完成を焦らないことが成功の秘訣です。
結局、口塗りは金虫食いにしてみました。絞漆(しぼうるし:研ぎ出し用に粘度を高めた漆)で山立てを行った後(写真左)、金箔を貼り、梨地(なしじ)漆を最低でも2回は塗り重ねた後、研ぎ出して虫食い模様を表します。
この後、すべての糸巻き部分を生正味(きじょうみ)漆で蝋色仕立(ろいろじたて)とし艶出しを行った後、ガイドやリールシートの取り付けとなります。




9月19日、ようやくガイドとリールシートの取り付けが終わりました。
ここまで来ると全体像が見えてきます。ガイドはカワハギ竿がN〜LDB、オニカサゴ竿がLC〜LDB、トップは両方ともMNです。
握りは水糸巻きにしました。濡れた手で握っても滑り難く、ここ数年、実釣で気に入っている方法です。水糸に薄めた生漆(きうるし)を染み込ませて固めてしまいます。また、今回は両方ともステンレスの尻手環を取り付けてみました。
これから細かい塗り作業の連続で、完成はまだまだ先になります。
カワハギ竿はK山さん用ですので、なんとかベストシーズンに間に合うよう頑張ります。




10月3日、いよいよ完成間近となりました。
ガイドやリールシートの取り付け、その後の細かい塗り作業もようやく終わりに近づき、あとは2回目の芽打ちを施せば、漆作業は完全に終了。
その後、上げ矯めと言って、弱い火入れを行い、塗り作業中に発生した狂いを微調整します。
次いて手元と胴の接着、印籠継ぎの微調整、油打ちで全体を磨き上げて完成となります。
予定よりだいぶ遅れてしまいましたが、着手してから約3ヶ月、あと1、2日で終了です。
漆は塗って日が浅いと発色が良くありませんので、ふくりん(塗りの際に引く細い線)も本当は白色なのですが、茶色くなっています。
年月が経つに連れて全体的に色が枯れて発色が鮮やかになるのが本漆の特徴です。


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