あらいを美味しく作る(7月21日朝日新聞より流用)

白身魚のあらいが美味しい季節です。あらいと言えば真っ先にマゴチやスズキを思い出します。最近、家でもマゴチをあらいにして頂くことがあり、普通に刺身にしたものと食べ比べたりしますが、あらいのコリコリ感やさっぱりした味は臭みもまったくなく酒の肴には極上の一品です。

あらいのコリコリ感は筋肉の収縮によるものです。活き〆にした直後の魚には、筋肉が収縮するのに必要なエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)が含まれています。冷水で洗うことが刺激になって、ATPが急激に消費され、筋肉が収縮するのです。時間が経つとATPは分解されてしまうので、筋肉は収縮しません。このため〆た直後の魚でなければあらいになりません。

〆た直後の身を薄く切り、急速冷凍しておくと、ATPを残すことができます。水(18℃)や温水(49℃)の中で掻き混ぜながら急速解凍すれば、あらいに仕上げることができます。あらいに向く白身魚が大量に釣れた時は、薄切りにして急速冷凍しておくと良いようです。自宅の冷蔵庫でどこまで急速冷凍できるかはよく分かりませんが、興味のある方は実験してみるのも良いのではないかと思います。

マゴチは生命力が強いので、帰宅時にバッカンやクーラーに水を張り、ブクで酸素を供給してやれば長時間生きているそうですので、あらいにするにはベストな持ち帰り方かもしれません。私がマゴチを釣りに行く横浜新山下の渡辺釣船店は自宅から遠くないので、帰り際に活き〆めにして新聞紙に包み、氷水には着けずにそのまま持ち帰るようにしています。帰宅後すぐにあらいにするとたいへん美味しく頂けます。

コチは漢字で「鯒」と書きますが、一説によると昔からあらいにするために「桶」に入れて生かして持ち帰ったため、「鯒」という漢字が当てられたという話もあります。これからが夏本番、スズキも今が旬、あらいにできるお魚が釣れる機会もありますので、まだまだ楽しめそうです。


マゴチのあらい。わさび醤油で頂く他、紅葉おろしとポン酢で頂くのもお勧めです。

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