和竿のご使用上の注意点とお手入れ方法

私はシロギスやカワハギなどの小物釣りでは自作の和竿をメインに使用しています。このページをご覧の方々の中にも和竿の魅力に惹かれ、高価な和竿をお持ちの方も多いのではないかと思います。昔からカワハギ竿などで穂先に鯨のひげを使用したものが珍重されますが、この種の和竿は特に高価で、一般的には貼り合わせのイワシ鯨を使用したものが多いですが、セミ鯨を使用した和竿になりますと無条件に10万円以上はするのではないかと思われます。セミ鯨の素材だけで現在では4〜5万しますから、すごいですよね。また、和竿はまったく同じ物は世の中に二本と存在しません。それは自然界にまったく同じ竹というのは有り得ず、また全てが手作りによるものだからです。このように和竿は高価なものが多く、一本一本それぞれに個性があり、せっかく手に入れた貴重な和竿も、使い方やお手入れ方法を間違えると、折れたり、機能が低下したりしてしまいます。お気に入りの竿もこのようなことになっては、まったく同じ物を買い求めることはできませんので、その取り扱いが大事になります。逆に使い方やお手入れ方法に気をつければ、本漆の和竿の場合、年が経つに連れて色が枯れ、艶が増し、より味わい深いものに変化していきますし、機能が低下することもなく、数十年という永きに渡って使い続けることが可能です。

前置きが長くなりましたが、和竿のご使用上の注意点とお手入れ方法を、私なりに次のようにまとめてみました。ご参考になることが少しでもありましたら幸いです。

【ご使用上の注意点】

1.傷から保護する

漆塗り(特に胴塗り部)は竿が完成して一年程度は非常に剥げ易いため、ご使用に際しては船べりや堤防のコンクリートに直接当てたり、ぶつけないように注意してください。
市販の竿受け(YAMASHITAの「竿やすめ」など)は硬いプラスティックの部分に直接当てると漆が剥げますので、必ずゴムかスポンジを貼って、塗りを保護するようにしてください。



2.インロー継ぎの注意点

3.節芽を横にして使う

実釣にてシャクリ、合わせ、やりとりなど竿に加重をかける場合、必ず節芽が横向き(ガイドが上または下向き)になるようにして使用してください。節芽とは節の部分の枝を切り落とした跡の、いわゆる芽と呼ばれる部分です。和竿は必ずこの部分が横になるようにガイドやリールシートが取り付けられています。竹の性質上、節芽が上下の向き(ガイドが横向き)での耐久性は極端に劣化しますし、曲がり癖が付きやすくなります。特に丸節竹では穂持ちの最初の節芽を上向きにしてシャクると簡単に折れることがあります。

4.キャスト時の注意

シロギス釣りなどで遠投する場合、穂持ち(グラス穂先と竹の繋ぎ部とその下の竹の部分)に瞬間的に急激な力が掛からないように竿全体に仕掛けの重みを乗せるようにして投げてください。無理な投げ方をして、実際に穂持ちから折ってしまい、修復不能になった方がいます。また、キャスト時には穂先にラインが絡んでいないことを十分に確認してから行って下さい。


【ご使用後のお手入れ方法】

1.塩分と汚れを落とす

使用後は当日のうちに真水(水またはぬるま湯)で直接塩分や汚れを洗い流すか、濡らした布でよく拭き取ってください。ガイド部は歯ブラシを使うと汚れを良く落とせますが、ヘチ竿など穂先の細いものは気をつけて洗ってください。継ぎ竿の場合は、すげ口の内部に絶対に水が入らないように注意してください。万が一水が入ってしまった場合、下に向けて水をよく抜いた後、上に向けて十分乾燥させてください。一本竿の場合は水の浸入はありませんので、全体をシャワーなどで洗っても構いませんが、水没させるようなことは避けてください。

2.水分を拭き取る

柔らかい布(使い古した下着がベスト、ウェスとも言います)、またはティッシュペーパーで水分を完全に拭き取ってください。厚手のタオルはお勧めしません。ヘチ竿など穂先の細いものは特に気をつけて、元から先に向かって拭いてください。また、濡れたまま乾燥させると、稀に跡が残ってしまう場合があります。海水が付いたまま数日間放置しておくと、水分のみが乾燥し、塩分がベトベト残る状態になります。この状態は表面や金属部にダメージを与えますので、真水でのお手入れだけはご使用当日のうちに必ず行ってください。

3.油分を与えて磨く

和竿専用ワックスまたはサラダオイルを柔らかい布かティッシュペーパに少量含ませ、全体に薄く伸ばした後、油分が残らぬよう、丁寧に拭き取ってください。要は表面に油分の薄い膜ができればいいです。市販で良く見かけるグリス状の「竿の油」はお勧めできません。あれは淡水の小物竿などの並継ぎ部分に昔から使用されるものですので、適していません。また、金属磨き用のアモール(Amor)は一見ワックスのように見えますが、研磨性があるので絶対に使用しないで下さい。お勧めはふぐ印の「ツヤール」です。無ければサラダオイルでもいいです。インロー継ぎの場合、インローの芯およびすげ口内部には絶対にワックスや油が付かないように気をつけてください。継ぐ際にギチギチいってしまい正常に継げなくなってしまいます。インローの芯に付いてしまった場合は、十分に拭き取ってから、ロウソクや竿用の木蝋を軽く擦り付けてみてください。すげ口内部に付いてしまうと、油分が竹に染み込んだ後、水のように乾燥しないので、修復不能になることもあります。



4.保管する

竿袋に仕舞い、なるべく温度や湿度の変化の少ない場所に保管してください。保存環境や保存期間などにより、継ぎに誤差が生じて、現場で正常に継げなくなると困りますので、次回釣行する際、直前に継ぎを確認してから出かけるようにしてください。使用する内に竹に曲がり癖がついてきたり、その他メンテナンスが必要と思われる場合は、製作者にご相談されることをお勧めします。

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