春告魚と春一番

2月14日(土)、葉山芝崎港の五エム丸からKOBIさん、OKAZUさんと3人でイワシメバルに出撃である。イワシメバルとはそういう種類のメバルが居るわけではなく、俗に活きイワシ餌で狙うメバル釣りをそう呼んでいる。活きイワシ餌の使用は地域により規制されており、湾口部では冷凍小魚などを使う船宿がある。一方湾奥では昔からモエビや青イソ(夜釣り)が主流であり、一般にイワシメバルと対称に活きエビ餌を使う釣りはエビメバルと呼ばれている。これは各々使用する道具や仕掛け、釣り方が異なり、出船する地域も異なるため、別の釣り物として呼び分けられているのである。近場で活きイワシを使ったメバル釣りを楽しめる釣り場といえばやはり三浦半島西海岸ということになろう。メバル船は各地域とも近年は禁漁期間を設け、それぞれ2月1日解禁となる。相模湾も同様でイワシメバルが春の風物詩となり、その釣り味から高い人気を誇る釣り物として定着しているのである。

今日はイワシメバルの大ベテランKOBIさんの御計らいにより、OKAZUさんと私、念願のイワシメバルを初体験である。我々2人は電車組、途中KOBIさんに車で拾って頂けることになったが、出船時間、待ち合わせ場所などを考慮し、葉山出船に決定。3人は6時10分に京急新逗子駅で待ち合わせ、一路葉山芝崎港は勝蔵丸に向かうのであった。順調に船宿に到着したまでは良かったが、どうやら勝蔵丸ではメバル船が急遽貸切になってしまったようで、我々の乗船可否がイマイチはっきりしない。すかさずKOBIさんが機転を利かせて、並びの五エム丸に問い合わせること即座に乗船OKと相成った。一瞬の不安であったが、これで船に乗れることは約束され一安心である。


初めて訪れた葉山芝崎港。

しかし、今日は最初からもうひとつ重大な不安を抱えていたのである。日本海側の低気圧が猛烈に発達しながら太平洋側に進んで来るため、南西強風が吹き荒れ大シケとなるのは時間の問題なのである。そう、春一番である。嵐の前の静けさであろうか、この時間は北の弱風、海はベタ凪、風なんか吹く気配すら感じさせない穏やかな朝である。しかしこの予報は99.9%外れようがないのである。後は何時吹き始めるかの問題であり、今日は早上がり覚悟、運がよければぎりぎり時間まで持つかどうかという微妙な情勢なのである。

そんな予報の影響か船宿街を行きかう釣り人は少なく、電話での問い合わせはあるがお客さんは少ないとの女将さん談であった。広くてきれいな店内では女将さんからコーヒーや味噌汁をもてなされ体の中から暖まる。KOBIさんから基本レクチャーを受け、しばし雑談すること6時50分、船を付けたから支度してくださいと船長。3人は早速船に乗り込み準備を開始する。釣り座はイワシの生簀に近い右舷ミヨシから3席確保。と言っても乗客は我々3人のみ、どうやら貸切状態のようである。釣り座はジャンケンで勝った順に前から、私、OKAZUさん、KOBIさんの順となった。準備が整うと定刻より少し早めの7時18分、いざ出船である。


準備中のKOBIさん、OKAZUさん。

岸壁を離れた船は低速で港を出る。さあどこでやるのかな、などと思うまもなく約1分で船は停止し、港の目の前の沖磯周りで開始の合図となった。生簀から活きイワシを救い、各自バケツに5、6尾を移す。慣れない仕掛けに手間取りながら2本針に7cm程の小さなイワシを鼻掛けにし、仕掛けを下ろしてみた。水深は約7m、海底は大きなゴロタと海草の林のようだ。早くも一投目からアタリが出るが、これはメバルではない。しばらくして分かった正体はオハグロベラやアナハゼといった磯場の定番外道達である。船長から1mくらいタナを取るよう指示が出たが、海底は1m前後の起伏があり、2mくらい上でも海草などに引っ掛かるため、なかなか予断を許さない釣りである。

今日の仕掛けは自作、初めてなので事前にKOBIさんに頂いた情報を参考に作成した。胴付き2本針で幹糸1.5号、下から40cm、110cm、100cm。ハリス0.8号55cm。針はメバル専用針9号、オモリは艶消し黒の15号である。ハリス接続部にはヨリトリックSSを使用した。幹糸8本とハリス約25本をそれぞれ用意し、ハリスの先端をチチワにしておき現場で接続する形を採った。餌付け時に使用する魚救い網は持参したが、ここ五エム丸では船に用意されている。配水ポンプは無いので、バケツの餌が弱らぬよう水はまめに交換してやった方が良さそうだ。


左:いざ出船、右:実釣を開始するも・・・。

予想以上にメバルのアタリは遠い。既に朝のゴールデンタイムが経過したが、たまに掛かって来るのはカサゴだけである。8時40分、KOBIさんの竿が曲がる。待ってました船中第1号。やっと喰い出したか、続けてOKAZUさんも掛けた。タナは低目で下針に喰ったようである。OKAZUさんが2尾目を掛ける。一方私にはアタリが無い、たまに当たるのはやっぱりカサゴだけである。ようやく出た本命に期待が膨らんだが、どうやら時合は去ったようである。ここには3尾しか居なかったのか?後が全然続かないのである。マズイ、出遅れてしまった。(汗)KOBIさんとOKAZUさんがメバルのアタリについて話しているが私は参加できないのであった。

アタリが遠い時間を過ごす3人。たまに誰かしらがカサゴを追加するが、メバルの反応は極めて低い状況である。9時50分、いきなりひったくるように竿が絞り込まれた。桁外れの引き込みにとっさに対応するが、竿の溜めだけでは到底止められない強さである。カサゴやメバルでは無い。ハリスが細いのでドラグを緩めてラインを送り出して対応したが、次の瞬間根に回られ根掛かりである。魚が動いて根から外れるのを待ったが一向に出てくる気配が無い。残念だが諦めることにした。船長やOKAZUさんのお話ではヒラメだったのでは?とのことであった。言われてみればそんな雰囲気が濃厚だが、こればっかりは上げて何ぼ、バラしてしまっては掛けなかったのと同じなのである。


左:餌は7〜10cmくらいのシコイワシ(カタクチイワシ)、右:港前の磯周り4〜10m。

10時、気が付くと船の向きが変わった。風向きは南西に変りその兆候が現れ始めたが、海上は依然穏やかなままである。ズーン、ズ−ンと長いストロークで引っ張るアタリがあり、針掛かりせず。仕掛けを上げるとイワシは鋭く真っ二つに切断されている。アオリイカもしくはヤリイカの仕業であろう。この時期、ヤリイカ乗合では水深100m以深で好釣果が上がっているが、乗っ込み部隊がこのような浅場に産卵のために上がってきており、アオリイカ釣りの定番外道として大型が釣れている。今日のメバルポイントは最浅で4m、浅いところでは海底の状態が確認できるどころか、仕掛けに付いているイワシが肉眼で確認できるほどである。普通のアオリ用の餌木仕掛けではタナを切ると中オモリが空中に出てしまう浅さである。こういうところではスピニングタックルで中オモリを付けず餌木だけで攻めたら、もしかして好釣果が期待できるかもしれない。仕立船であれば試してみるのも面白いだろう。


左:私が竿買うとまったくろくなことにならない、右:一色海岸の沖合い20〜25m立ち。

10時45分、浅場に見切りを付け一色海岸の沖合い20m立ちへ移動である。出船して3時間半が経過したが、私には未だメバルの反応無し。期待が膨らむ移動であった。11時、大島で西南西の風が11mと気象情報が伝える。風がそよそよ微妙にその兆候を伝えてくるのだが、こちらはまだしばらく大丈夫そうだ。海底は浅場に比べると若干平坦であるが多少の起伏を感じる硬い地盤である。

11時20分、タナを50cm程度切って竿を置き、おにぎりを頬張る。竿がガタッ!とずれる音で目をやると獲物が餌を喰い込み中である。すかさず竿を手に持ち絞り込みを待つと軟調竿が胴まできれいに入り込んだ。カサゴではなさそうだが自信が無い。巻き上げ中、海面下でラインが手前に走ったのでメバルと確信。浮かび上がったのは黄銅色に輝く美しい魚体、良型である。ここで落っことしたら今日は泣いても泣ききれないので、OKAZUさんが玉網で救ってくれた。ありがとうございます。これで私もメバルの話に参加できるようになった。本当に嬉しい1尾である。ちなみに喰ったのは上針であった。

直後、KOBIさんが竿を曲げる。これもメバルである。時合到来か!しかし、今日は本当にアタリが続かないのである。船長も型が出たポイントを丹念に流しかえるが、ここではこの2尾のみ。なんと厳しいメバル釣りだろうか、こんなに苦労したメバル釣りは経験したことが無い。アタリの回数はヒラメ釣り並み、今日は1尾が貴重である。12時、嫌な風になってきた。沖に出漁している船の声が無線で聞こえるが、どうやら吹き出したようである。


左:本人のメバル27.5cm、右:KOBIさんの一尾目。(船宿HPより写真拝借。)

12時25分、海上がざわついてきた。港の真沖、10m立ちに戻る。沖の船は早くも撤収し始めたようである。船長の判断でこの流しが最後と早上がりが告げられた。このままこのポイントではアタリが出ること無く、12時45分、もう少し粘れそうな気がしたが、本日はこれにて撤収と相成った。下船し船宿に帰る途中、海の方を振り向くと、既にウサギの大群がこちらに向かって飛び跳ね、ぶっ壊れる寸前の海であった。

今日は早上がり覚悟で出かけたイワシメバルだったが、予報通り午後から春一番となってしまった。12時45分までできたので残念ではあるが納得である。一方予想外であったのはメバルの活性の低さである。正直ここまで釣れないとは思っていなかった。今期のイワシメバルは低調とは言え、釣行前に密かにツ抜けなんて目標を立てていたが、いざ船に乗ってみるととんでもない誤算であった。しかし、初めての葉山出船でKOBIさん、OKAZUさんと楽しく釣りをさせて頂き、また風物詩のイワシメバルを初体験することができた。メバルの釣り味もほんのちょっとではあるが楽しむことができた。今日は私にとってある意味忘れられない一日になったことは間違えないだろう。


本日の釣果、メバル27.5cm 1尾、カサゴ16〜23cm 11尾。

【船宿HPコメント】
7時半イワシメバル&カサゴ船14日葉山沖水深6〜25mを狙い、メバル・カサゴいい人大型28cm頭にトップ12尾で3人で11尾2人と12尾と早上がりにしては食いまずまずでは??本日もカサゴも含む釣果です。今日も、葉山沖を広範囲に狙いました。今日は、前半から港前から探索開始です。こちらでメバル・カサゴポチーんポチんとヒットしてくれて朝からまずまずの状況かな???そして前半も朝のうちと食いは変わらず拾い釣りですが、たまーにポチン・たまーにポチんとあたってくれて良かったでした。そして後半は南西風の強風が吹き始め12時半早上がりとなりました。早上がりにしてはまずまずでは??明日も頑張りますよ!!

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