竹採ったはいいが後が大変(後編)

前編に続いて後編をお届けします。これからは屋内の作業です。採って来た竹は泥やヤニで汚れていますので、タワシやナイロンブラシにクレンザーをつけて洗います。これがけっこう時間が掛かる作業で、一日では到底終わりません。


左:孟宗竹を洗い中、右:丸節竹を洗い中

節の前後に凹凸があるので、頑固な汚れがこびりついていて落とすのに骨が折れます。多少の汚れが残っていても火入れの際に油が浮き出してくるため、そのときに拭き取ればきれいになります。汚れが酷い竹ほど、厚くこびりついた汚れで表皮が保護されているためか、洗ってみると地肌がきれいな竹が多いものです。


左:洗浄前、右:洗浄後。

風呂に入る度に3〜5本づつ持ち込んで、風呂場で洗いますが、毎日地道にやって結局1週間掛かってしまいました。はなはだ面白くない作業ですが、和竿の素材として仕上げるためには避けて通れない工程です。ちなみに布袋竹は火入れの際に大量の油が浮き出てきますので、事前に洗わなくても火入れの際に丁寧に拭き取れば汚れはほとんど落ちてしまいます。


洗い終わってきれいになった竹。

次に火入れを行い油を抜くと同時に、大雑把に矯めて竹を粗方真っ直ぐにしておきます。孟宗竹は根っこの近くが湾曲しているものが多く、節込みの竹などは曲がりが直らないことを覚悟で持ち帰ることがあります。このような竹は粗矯めの時点で無理をして折ってしまうことがよくあります。今回は癖の悪い竹が何本かありましたが、無事折らずに終了しました。竹に熱が回ると表皮に油が浮き出してきますが、これは乾かないうちに雑巾で拭き取ります。丸節竹も基本的に同じですが、今回1本無理したら折れてしまいました。


左:火入れ中、右:癖が悪い竹は折れるのを覚悟で厳しい矯め。

今日は半日掛けて火入れと粗矯めを行いました。後は色が白くなるまで屋外の風通しの良い場所で乾燥させます。日光が当たる側は早く緑色が抜けますので、たまに向きを変えてやりながら1〜2ヶ月放置しておいて大丈夫です。色が抜けたら、紐で束に縛って屋内で保管します。あまり長期間屋外に放置しておくと、古くて硬い竹は気温や湿度の急激な変化によってひび割れを起こすものがありますので注意が必要です。実際に竿の素材として使用するには最低1年、できれば3年以上寝かした素材を使用することになります。


火入れと粗矯めが終わった孟宗竹、曲がりを取ると最初より良い竹に見えてくるから不思議です。


こちらは火入れと粗矯めが終わった丸節竹、この中から何本が竿になるのか。

今回、竹を採って来てから和竿の素材として仕上げるまでの様子を2回に渡ってご紹介してきましたが如何でしたでしょうか?実際、竿作りに着手するまでに、「こんなことやってるんだ」というのが少しでもお伝えすることができたなら幸いです。

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